古民家宿の物語 日本全国リノベーション 87 福岡県福岡市「木香庵」(上) 築かれた家と文化の物語
住宅新報 2025年1月14日 号 11面

いまやすっかりビルやマンションの高層建築物ばかりになってしまったという福岡市の六本松界隈の一角にある建物は、戦後間もない45年、終戦の混乱が広がる中、静かに建設を始めたそうだ。棟梁である成田さんの義父は、自身が引退した後に住むための「数寄屋造り」の家を夢見て、必要な材料を戦時中から少しずつ蓄えていた。敗戦直後の博多では、街は荒廃し、多くの人々が仮設住宅で暮らしていた。そんな中、この家は人目を忍んで建設が進められ、仕事の合間を縫って棟梁が手を加え続け、完成までには約8年もの年月が費やされた。
その後、数奇屋造りの建物を囲むようにして別棟や増築を繰り返していき、2階も加わった。棟梁の弟子たちが住み込みで生活しながら技術を学ぶため多くのスペースが必要だったからだ。大家族のような日常が繰り広げられ、最盛期には、家には家族や弟子、親族ら15人もの人々が生活を共ににしていた。
そして時代は移り変わり、住む人々が減り始めた。子供たちが独立し、家が空き始めた頃、成田さんのご主人が当時48歳で亡くなった。成田さんは、後を継いで建設業の舵を取ることになった。その中で、家を再活用するための新たな構想が生まれる。






















